中古ショップの棚で、隣どうしに並んでいるのに値札だけ倍近く違うパターを見かけたことはないでしょうか。手に取ると、フェースやソールに「MILLED」「PLD」と刻んであります。店員さんに聞くほどのことでもない気がして、6万円台という数字だけが頭に残ったまま、結局いつもの2万円台の棚に戻ってしまう。私も何度かそうやって引き返しました。この記事は、その棚の前でもう一度立ち止まるための整理です。
この記事でわかること
- 当サイトのDBが「削り出し(ミルド)」と記録しているのは5シリーズ35本だけ
- 「削り出し=インサートなし」は成立しない——オデッセイとPINGでまったく逆だった
- 削り出しを選んでも、形・トーハング・ネックの選び方はいつもどおりでよい
- 変わるのは価格だけ。新品で1.5倍、中古では1.8倍に開き、その差は縮まない
- 全35本の早見表(形状・トーハング・ネック・長さ・価格・3軸スコア)

6万円台のパターは、何が「削り出し」なのか
まず言葉の整理からです。ミルド(milled)=削り出しは、金属のかたまりを機械で削ってヘッドやフェースを作る製法のことを指します。鋳造(溶かした金属を型に流す)に対する言い方です。
ただ、カタログの宣伝文はどのメーカーも似たようなことを書きます。そこで当サイトでは、DBが「削り出し」と記録しているシリーズだけを対象にしました。数えると5シリーズ35本です。
対象は5シリーズ35本(数え方を2通りで一致させています)
- PING PLD Milled……15本
- Odyssey Ai-ONE MILLED……9本
- Odyssey Ai-ONE MILLED TRI-BEAM……5本
- Odyssey Ai-ONE MILLED SILVER……3本
- Odyssey Ai-ONE MILLED CRUISER……3本
ブランド別ではオデッセイ20本・PING15本。発売年は2022年から2025年に広がっています。
この35という数は、シリーズ特性データから削り出しに言及する5シリーズを拾った場合と、モデル名のシリーズ欄に「MILLED」を含む行を数えた場合で、まったく同じ35本になりました。数え方を変えても境界が動かないので、この記事はこの35本を「削り出しパター」として扱います。
逆に言えば、この35本の外側について、削り出しかどうかを当サイトは判定しません。たとえばツアー系として知られるシリーズでも、DBに削り出しという記録が無ければ、この記事では「そうである」とも「そうでない」とも書きません。根拠のないことを書かないための線引きです。
削り出し 全35本の早見表
DBから機械で書き出したものです。スコアと価格はDBの値をそのまま転記しています。中古相場が「—」になっている理由は、記事の後半でまとめて説明します。
| ブランド | シリーズ | モデル | 発売 | 形状 | トーハング | ネック | 長さ | 新品定価 | 中古相場 | 寛容性 | 操作性 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| PING | PLD Milled | Anser | 2022 | ブレード | クォーター | クランク | 34インチ | ¥66,000 | ¥30,100 | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ |
| PING | PLD Milled | Anser 2 | 2022 | ブレード | クォーター | クランク | 34インチ | ¥66,000 | ¥29,880 | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ |
| PING | PLD Milled | DS 72 | 2022 | ハーフマレット | フェースバランス | ダブルベンド | 34インチ | ¥66,000 | ¥30,890 | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| PING | PLD Milled | Prime Tyne 4 | 2022 | マレット | ハーフ | ショートスラント | 34インチ | ¥66,000 | ¥26,900 | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
| PING | PLD Milled | Anser 2 Matte Black | 2023 | ブレード | クォーター | クランク | 34インチ | ¥66,000 | — | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ |
| PING | PLD Milled | Anser D | 2023 | ブレード | クォーター | クランク | 34インチ | ¥66,000 | ¥32,890 | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ |
| PING | PLD Milled | Oslo 4 | 2023 | マレット | ハーフ | ショートスラント | 34インチ | ¥66,000 | — | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
| PING | PLD Milled | Ally Blue 4 | 2024 | マレット | ハーフ | ショートスラント | 34インチ | ¥66,000 | — | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
| PING | PLD Milled | Anser 2D | 2024 | ブレード | クォーター | クランク | 34インチ | ¥66,000 | — | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ |
| PING | PLD Milled | Anser Gunmetal | 2024 | ブレード | クォーター | クランク | 34インチ | ¥66,000 | ¥38,880 | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ |
| PING | PLD Milled | DS 72 Gunmetal | 2024 | ハーフマレット | フェースバランス | ダブルベンド | 34インチ | ¥66,000 | ¥40,800 | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| PING | PLD Milled | Oslo 3 | 2024 | マレット | クォーター | ショートスラント | 34インチ | ¥66,000 | ¥37,880 | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| PING | PLD Milled | Anser 30 | 2025 | ブレード | クォーター | クランク | 34インチ | ¥66,000 | ¥40,880 | ★☆☆☆☆ | ★★★★☆ |
| PING | PLD Milled | Anser 4D | 2025 | ブレード | ハーフ | ショートスラント | 34インチ | ¥66,000 | ¥39,700 | ★☆☆☆☆ | ★★★★★ |
| PING | PLD Milled | Kushin | 2025 | ハーフマレット | フェースバランス | ダブルベンド | 34インチ | ¥66,000 | — | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED | EIGHT T S | 2023 | マレット | ハーフ | ショートスラント | 34インチ | ¥68,200 | — | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED | ELEVEN T | 2023 | マレット | フェースバランス | ダブルベンド | 34インチ | ¥68,200 | ¥32,615 | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED | ONE T | 2023 | ブレード | フル | クランク | 34インチ | ¥68,200 | — | ★☆☆☆☆ | ★★★★★ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED | SEVEN T CH | 2023 | マレット | クォーター | クランク | 34インチ | ¥68,200 | ¥28,390 | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED | SEVEN T DB | 2023 | マレット | フェースバランス | ダブルベンド | 34インチ | ¥68,200 | ¥30,900 | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED | SIX T | 2023 | マレット | フェースバランス | ダブルベンド | 34インチ | ¥68,200 | ¥30,900 | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED | THREE T S | 2023 | マレット | フル | ショートスラント | 34インチ | ¥68,200 | — | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED | TWO T | 2023 | ブレード | フル | クランク | 34インチ | ¥68,200 | ¥30,880 | ★☆☆☆☆ | ★★★★★ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED | JAILBIRD MINI T VERSA90 DB | 2025 | マレット | フェースバランス | ダブルベンド | 34インチ | ¥68,200 | — | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED CRUISER | JAILBIRD T DB | 2025 | マレット | フェースバランス | ダブルベンド | 38インチ | ¥74,800 | ¥36,880 | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED CRUISER | JAILBIRD VERSA90 T DB | 2025 | マレット | フェースバランス | ダブルベンド | 38インチ | ¥74,800 | — | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED CRUISER | ONE WIDE T CH | 2025 | ブレード | ハーフ | クランク | 38インチ | ¥74,800 | — | ★☆☆☆☆ | ★★★★★ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED SILVER | SEVEN T DB | 2025 | ハーフマレット | フェースバランス | ダブルベンド | 34インチ | ¥68,200 | — | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED SILVER | SIX T DB | 2025 | ハーフマレット | フェースバランス | ダブルベンド | 34インチ | ¥68,200 | — | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED SILVER | TWO T CH | 2025 | ブレード | ハーフ | クランク | 34インチ | ¥68,200 | ¥33,880 | ★☆☆☆☆ | ★★★★★ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED TRI-BEAM | DOUBLE WIDE T | 2024 | マレット | クォーター | クランク | 34インチ | ¥71,500 | — | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED TRI-BEAM | DOUBLE WIDE T CS | 2024 | マレット | フェースバランス | センターシャフト | 34インチ | ¥71,500 | ¥32,880 | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED TRI-BEAM | ONE T CH | 2024 | ブレード | ハーフ | クランク | 34インチ | ¥71,500 | — | ★☆☆☆☆ | ★★★★★ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED TRI-BEAM | SEVEN T | 2024 | マレット | クォーター | クランク | 34インチ | ¥71,500 | ¥30,880 | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
| Odyssey | Ai-ONE MILLED TRI-BEAM | SIX T CH | 2024 | マレット | クォーター | クランク | 34インチ | ¥71,500 | — | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ |
3軸スコアのうちコスパ★はこの記事では使いません。35本のうち34本が★1に貼りついていて、モデル間の差がまったく出ないからです。この指標は中古価格と値落ちの小ささから機械的に決まるもので、発売から日が浅い高価格帯のモデルは自動的に★1になります。優劣の根拠にはなりません。
「削り出し=インサートなし」は間違い——2社でまったく逆だった
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
削り出しという言葉には、なんとなく「余計なものを貼らない、金属そのままの硬派なフェース」というイメージがついて回ります。私もそう思っていました。ところがDBで35本を並べると、2社がまったく逆のことをしているのが分かりました。
オデッセイ20本は「削り出したうえでインサートを入れる」
オデッセイの MILLED 系4シリーズ20本には、すべてインサートが入っています。DBのシリーズ特性の記録はこうです。「6-4チタンからCNCミルド加工で削り出し。AIインサート搭載で打感と性能を両立する最上位ライン」。
つまりオデッセイにとっての削り出しは、チタンという素材と加工精度の話であって、フェースの中身を空けるという話ではありません。SILVER は仕上げ違い、CRUISER は中尺版、TRI-BEAM は三角ホーゼルとの組み合わせで、いずれも同じインサートを積んでいます。
PING15本は「削り出して、インサートを使わない」
いっぽう PING の PLD Milled 15本には、インサートが入っていません。DBの記録は「303ステンレスから4時間以上かけてCNC加工。深いAMPグルーブ」。フェースに何かを貼るのではなく、金属面に深い溝を刻むという設計です。
同じ「削り出し」という日本語で呼ばれている2つが、フェースの作り方としては正反対だったわけです。ですから「削り出しかどうか」を聞いても、フェースの中身は分かりません。素材と加工の話と、中身の話は別の軸だと考えてください。
PING側15本については、すでに1本まるごとの記事があります。PLD Milled だけをもっと詳しく見たい方はそちらへどうぞ。
削り出しを選んでも、形の選び方は変わらない
「削り出しにすると選択肢が狭まるのでは」という心配は、数えてみると当たりませんでした。
形状・トーハング・ネックは、ふつうに散らばっている
- ヘッド形状=マレット17本・ブレード13本・ハーフマレット5本
- トーハング=フェースバランス12本・クォーター12本・ハーフ8本・フル3本(4種類すべて)
- ネック形状=クランク16本・ダブルベンド11本・ショートスラント7本・センターシャフト1本
DB全体の比率と大きく変わりません。削り出しは「形の選択肢」ではなく「作り方の選択肢」だということです。ふだんどおり、まず形状を決めて、次にネックで自分のストローク軌道に合わせればよい。ダブルベンドやセンターシャフトはストレート寄り、ショートスラントやクランクはアーク寄りの目安になります(あくまで目安で、断定はできません)。
ただし、寛容性★2だけが1本もありません
ひとつだけ穴があります。寛容性★2のモデルが35本中0本でした。内訳は★1が13本、★3が5本、★4が10本、★5が7本。DB全体には★2のモデルが30本以上あるので、これはこのグループに固有の空白です。
理由は3軸スコアの決まり方にあります。寛容性はヘッド形状とトーハングの組み合わせだけから機械的に決まり、★2になるのは「ブレード×フェースバランス」というやや珍しい組み合わせのときです。削り出し35本にはその組み合わせが1本もなかった、というだけの話です。
そしてもうひとつ、正直に書いておきたいことがあります。PING PLD Milled のブレード8本のうち7本は、DBの列の上ではまったく同じ数字です(寛容性★1・操作性★4・クォーター・クランク)。違うのは名前と仕上げだけ。この価格帯は、スコア表で優劣をつける場所ではありません。形と仕上げと世代で選ぶ場所です。当サイトはデータで比べるサイトですが、データで差がつかないときは差がつかないと書きます。

変わるのは価格だけ——新品で1.5倍、中古でも縮まない
では何が違うのか。数字がはっきり別世界にいるのは、価格でした。
新品定価は、ほかのパターの1.5倍
削り出し35本の新品定価は¥66,000〜74,800(定価の中央値は¥68,200)。いっぽう削り出し以外のモデルの新品定価の中央値は¥44,000です。倍率にすると約1.55倍。新品定価はメーカーの公表値なので、ここは動きません。
中古でも約1.8倍。待っても降りてきません
「新品は高いけれど、中古まで待てば2万円台の棚に降りてくるのでは」——これがいちばん知りたいところだと思います。当サイトが中古相場の正典としている国内中古ショップの実測値だけで比べると、答えは降りてきませんでした。
削り出し側の実測19本と、削り出し以外の実測148本を比べると、中央値の倍率は約1.82倍。新品で開いた1.5倍の差は、中古で縮まるどころか広がっています。
重なり具合も数えました。削り出しでいちばん安い個体の水準に、削り出し以外で届いているのは実測148本のうち11本=7.4%だけ。しかもその11本は、オデッセイの上位ライン(S2S MAX・CRUISER・TRI-BEAM・SILVER など)に集中していました。ふつうのモデルの中古が削り出しの価格帯まで上がってくることは、めったに起きていないということです。
この記事で価格を数字で書いているのは、上の早見表とカードの価格タグだけにしてあります。相場は動くので、文章の中に金額を書くとDBを直したときに本文だけが古いまま残るからです。感覚として持ち帰っていただきたいのは「削り出しは値ごなれしにくい」の一点です。
中古相場が「—」の16本について
早見表で中古相場が「—」になっているのは16本あります。これは「品薄」という意味ではありません。理由は4種類あって、混ぜると誤解を招くので分けて書きます。
- DBに中古の値そのものが無い6本(Ai-ONE MILLED SILVER の SEVEN T DB / SIX T DB、CRUISER の VERSA90 T DB / ONE WIDE T CH、Ai-ONE MILLED の JAILBIRD MINI T VERSA90 DB、PLD Milled の Ally Blue 4)
- 値はあるが、海外サイト(USドル建て)が出どころの3本(Ai-ONE MILLED の ONE T / THREE T S / EIGHT T S)。当サイトは国内中古相場のみを使う決まりなので出しません
- メーカー系サイトの一律値が入ったままの4本(PLD Milled の Anser 2 Matte Black / Oslo 4 / Anser 2D / Kushin)。実際に棚を調べた値ではないので出しません
- カタログサイト由来で、中古ショップの実測ではない3本(TRI-BEAM の ONE T CH / DOUBLE WIDE T / SIX T CH)
あわせて、実際に棚を調べたのに書けなかったモデルもあります。美品クラス(ABランク以上)の完品が1〜2本しか無く、中央値を出すには標本が薄すぎたためです。1〜2本の値をそのまま相場として出すと、たまたまの1本に読者を引っ張ってしまいます。数字が入っていないことにも情報がある——そう読んでいただければと思います。
削り出し 代表5本と、私がこの製法を使っている理由
ここまでの見方をふまえた代表5本です。形状はマレット2本・ハーフマレット1本・ブレード2本で、寛容性は★5→★4→★3→★1→★1の順に並べています(★2はこのグループに存在しないので飛びます)。スコアと価格はDBの値をそのまま転記しています。
寛容性の端——このファミリーで唯一のセンターシャフト(Ai-ONE MILLED TRI-BEAM DOUBLE WIDE T CS)

Odyssey / Ai-ONE MILLED TRI-BEAM(2024年)
DOUBLE WIDE T CS
寛容性 ★★★★★ / コスパ ★☆☆☆☆ / 操作性 ★☆☆☆☆
寛容性★5はマレット × フェースバランスという、当サイトの採点ルールで最大値になる組み合わせから来ています。ヘッドが大きく慣性モーメントが最大で、フェースの開閉が最小に抑えられるため、打点が芯を外しても顔の向きが残ります。操作性★1はその裏返しで、球筋を打ち分ける道具ではありません(寛容性と操作性は両立しないので、方向性を取りにいく人には気になりません)。この1本の特徴は、削り出し35本のなかでただ1本のセンターシャフトだという点です。シャフトがヘッドの真ん中に刺さっているので、構えたときに目線とシャフトとボールが縦一直線に揃います。まっすぐ引いてまっすぐ出すストロークの人にとって、削り出しで選べる寛容性の上限がここです。長さは34インチ。
マレットは大きすぎると感じる人へ(Ai-ONE MILLED SILVER SIX T DB)

Odyssey / Ai-ONE MILLED SILVER(2025年)
SIX T DB
寛容性 ★★★★☆ / コスパ ★☆☆☆☆ / 操作性 ★★☆☆☆
寛容性が★5ではなく★4なのは、ハーフマレット × フェースバランスだからです。フェースの開閉が最小である点はマレットと同じですが、ヘッドが一回り小さいぶん慣性モーメントが一段落ちます。操作性★2も同じ理由の裏返しで、マレットよりわずかに打ち分けの余地が残ります。大型マレットの見た目に抵抗があるけれど、方向性は欲しいという人が現実に選ぶのはこのあたりです。SILVER は Ai-ONE MILLED の仕上げ違いのラインで、フェースの作り(チタン削り出し+インサート)は同じ。中古相場を載せていないのは、実際に中古ショップの棚を調べたものの、美品クラスの完品が1本しか見つからず、相場として出せる標本に届かなかったためです。在庫が無いという意味ではありません。長さは34インチ。
寛容性と操作性の真ん中(Ai-ONE MILLED EIGHT T S)

Odyssey / Ai-ONE MILLED(2023年)
EIGHT T S
寛容性 ★★★☆☆ / コスパ ★☆☆☆☆ / 操作性 ★★★☆☆
寛容性★3・操作性★3という、この35本のなかでちょうど真ん中に立つ1本です。マレットでありながらトーハングがハーフなので、フェースが自然に開いて閉じます。マレットの安心感は欲しいけれど、手でフェースを合わせる感覚も残しておきたいという人向け。ネックはショートスラントで、アーク軌道のストロークに寄せた設計です。ヘッド後方が細く伸びた形で、ラインに沿わせて構えやすいのも持ち味。中古相場を載せていないのは、DBに残っている値の出どころが海外サイトのドル建てで、当サイトが読者に約束している国内中古ショップの相場ではないためです。この1本は新品前提で検討してください。長さは34インチ。
操作性の端・削り出し+インサートありの代表(Ai-ONE MILLED SILVER TWO T CH)

Odyssey / Ai-ONE MILLED SILVER(2025年)
TWO T CH
寛容性 ★☆☆☆☆ / コスパ ★☆☆☆☆ / 操作性 ★★★★★
操作性★5はブレード × ハーフトーハングという組み合わせから来ています。ヘッドが小さくフェースが自然に開閉するため、距離感やラインを自分の手で作りにいけます。裏返しで寛容性は★1。芯を外したときに顔の向きが残らないので、ミスに対しては厳しい道具です。この2つが両立しないことは、当サイトの採点ルールの前提でもあります。オデッセイの削り出しはインサートが入っている——その代表がこのカードです。チタンから削り出したヘッドにAIインサートを組み合わせているので、「削り出しだから硬い」という予想とは違う手ざわりになります。ネックはクランクで、アーク軌道のストロークに寄せた設計。長さは34インチ。
削り出し+インサート無しの代表(PING PLD Milled Anser D)

PING / PLD Milled(2023年)
Anser D
寛容性 ★☆☆☆☆ / コスパ ★☆☆☆☆ / 操作性 ★★★★☆
上のカードと対にして見ていただきたい1本です。同じ削り出しのブレードでも、PINGはインサートを使わず、303ステンレスの面に深い溝を刻んでいます。ボールが当たるのは金属そのもの。ここが2社の設計思想の分かれ目です。操作性★4はブレード × クォータートーハングから。トーハングがハーフより浅いぶん、上のカードより開閉はおとなしく、ストロークの軌道が浅い人にも合わせやすい設定です。寛容性★1はブレードとして当然の値で、ミスへの強さを求める道具ではありません。Anser という名前のとおり、PINGがもっとも長く作り続けてきた形の、いちばん手のかかったバージョンにあたります。長さは34インチ。
私が削り出しを使っている理由(※筆者個人の感想・N=1)
最後に、データではない話をひとつだけ。私の現エースは PING PLD Milled Anser(2022年・ブラック)で、この35本のうちの1本です。削り出しフェースの打感が気に入っていて、いまも入れ替える気がありません。上から見るとアライメントの線が一切ないシャープなトップラインで、見た目も気に入っています。
ただし、ここは私ひとりの感想(N=1)です。当サイトのDBには「打感」を採点した列がありませんし、私が35本を打ち比べたわけでもありません。「ミルドは打感が良い」と一般化するつもりはありません。
それでもひとつだけ役に立ちそうなことを書くとすれば、私はこの1本を値札で選んでいません。フィッティングで、自分のストロークに合う形とネックを先に決めて、その結果として削り出しのモデルに行き着きました。順番が逆だったら、たぶん6万円台の棚の前でまた引き返していたと思います。
まとめ——削り出しは「作り方」であって「性能表」ではない
削り出しパターについて、当サイトのDBで分かったことを3点に整理します。
①「削り出し=インサートなし」は成立しません。オデッセイの20本はチタンを削り出したうえでインサートを入れ、PINGの15本はインサートを使わず金属面に溝を刻んでいます。同じ言葉で呼ばれている2つが、フェースの作り方としては正反対でした。削り出しかどうかを聞いても、フェースの中身は分かりません。
②形の選び方は変わりません。形状・トーハング・ネックはふつうに散らばっていて、選択肢が狭まることはありませんでした。いつもどおり形状から入って、ネックで自分のストローク軌道に合わせてください。ただし寛容性★2だけは1本もなく、PLD Milled のブレードは8本中7本がDBの列の上で同じ数字です。この価格帯は、スコア表で優劣をつける場所ではありません。
③変わるのは価格だけです。新品定価で約1.5倍、中古の実測でも約1.8倍。中古まで待てば降りてくる、という買い方は成り立ちませんでした。逆に言えば、値落ちしにくいということでもあります。
冒頭に書いた「6万円台という数字だけが頭に残って棚を離れる」を避ける方法は、たぶんひとつです。先に自分の形とネックを決めてしまうこと。それが決まっていれば、削り出しは「同じ形の、もう少し手のかかった版」として素直に比べられます。決まっていない段階なら、まずはブランド全体の選び方から入るほうが遠回りになりません。
なお、この価格帯を最初の1本にする必要はまったくありません。1万円台・2万円台から始める道筋は、初心者向けのガイドにまとめてあります。
⚠️ 3軸スコアは、ヘッド形状やトーハングから決まる設計上の指標です。実際の打感・構えやすさ・転がりの相性は人によって異なります。とくに削り出しは、素材と加工が変わることで手ざわりが変わる部分が大きく、数字では表せません。候補をしぼり込んだら、最終的にはゴルフショップの試打やフィッティングで、自分の手とストロークで確かめてください。データは遠回りを減らす地図であって、最後の1本を決めるのはあなた自身です。
ベストスコア86、アベレージ100のアマチュアゴルファー。
身長177cm、体重78kg前後の中肉中背40代ゴルファーです。
2020年にゴルフ開始。
2022年から本格的に練習をするようになったがなかなか上達せずに120前後から変わらず。
試行錯誤しながら、少しずつ上達中。
関東のゴルフ場がメインの月1~2ゴルファーです。








